赤とともに
この時期に完成させるものはどれも
夕立や 嵐や稲妻や雨上がりの湿度や
強風で揺さぶられる草木や 極端な高速度で流れてゆく雲や
突然の雹や虹や冷たい風のようになっていて
とても 穏やかな光やあたたかい愛や芳香には
ほど遠い
私の内側の 白紙が目立つ書籍のページが
風で千切れてゆきます
土深くも揺れ響き 身体の内を満たす水まで揺れる
雷鳴
赤がほしいのです まるで
柘榴を割ったときの 小さな果実の潰れたような
鏡の前で内緒で唇を何度も噛んだときの鮮やかな内出血のような
赤がほしいのです
こんな嵐の前の風の中にいては
嵐 雷鳴
ドアは閉じている
にもかかわらずすべての窓は開いているのです
嵐の中すべての窓は開放されている
にもかかわらず
ドアが閉じており外にはでられないままなのです
閉じているドアほど 怖ろしいものはなく
閉じているドアほど
膝を抱えて座っていることのできる理由になるものはなく
嵐が過ぎれば ドアが開けば
素晴らしいものを完成させることができるだろうから
だからどうか赤をください今すぐに
立ち上がり 私が創りだしたこの完全なる最高作品をうち破り
走り出るために赤を
・。*
・。*