かくされた森
「ずっと、子どものころから、子どもはすきじゃなかったし
にがてだったし、おとなもすきじゃなかったし わたしもすきじゃなかったし
このせかいも すきじゃなかったし どうしようもない 」
森のなかに夜があるのか それとも夜のなかに
(どんなに生まれかわろうと すべての時の すべての切なさは まるで
それが初めてのことのように やはり切ないのだろうね)
あの森を サガシテイルのです
いちばん大きく輝く星
だと信じていますが あれはあちらこちらに自由に移動する不思議な光で
それで そのちょうど真下で
暗い所は深い青暗さで
踏み締めるたびに 生き物の生きている匂いと死んだ匂いがする森を
森のなかは童話や絵本みたいには優しくない
と その大きく輝く星はしかたないというように
森のなかを微かに照らしてくれていて
なにがどうだろうとあきらめてはならない世界と あきらめてもただ朽ちるだけで
なににも責められない世界のことを わたしは知ったのです
わたしは森のなかで まるで夢のような 出会い と遭遇し
ほんの僅かな時間でしたがそれが現実であったことに喜び
それがどうにもならない現実であることに落胆し ようやく
あきらめて朽ちることをえらんだのです
森のなかに
いっ時の抱擁を遺し 永遠に
永遠に
・。*