青いインク壺

 日々写真詩-『妖精・精霊・詩』

詩が好きな理由 ー「突き当たりの部屋」

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  谷川俊太郎さんの 「突き当たりの部屋」という詩を
気にしています。

 

 

 「突き当たりの部屋」

  

  古ぼけた共同住宅

  きしむ階段を上がっていくと

  突き当たりの部屋から

  ピアノの音が聞こえてきた

  モーツアルトの初期のソナタ

  ドアが半開きになっている

  音に誘われてノックせずに入った

  どっしりした木製のラジオ

  白い杖    揺り椅子に座った老人

  巣のように丸めた手のひらに

  見慣れない卵がひとつ

  膝をかかえて床に座って

  一緒にモーツアルトを聴いた

  

  開け放たれた窓からの微風が

  カーテンを揺らしている

  世界はこれからどうなるだろう


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  これは、「ミライノコドモ」という詩集の、最後から2番目の詩です。

  この詩集の最後の詩は「ミライノコドモ」になっています。

すべてで  27の詩が並んでいます

 

  ・庭

  ・時

  ・ルネ

  ・よそ者

  ・海辺の町

  ・挽歌

  ・冥土の竹藪

  ・〈終わり〉のある詩

  ・二頁二行目から

  ・時の名前

  ・落下

  ・夢と家屋

  ・無関係について

  ・その日

  ・DIRGE

  ・キャベツの疲労

  ・記念撮影

  ・駄々

  ・森の言葉

  ・無名の娘

  ・旅の朝

  ・極めて主観的な香港の朝

  ・雲の懐かしさ

  ・ガヤの村でゴータマに

  ・河原の小石

  ・突き当たりの部屋

  ・ミライノコドモ

 

  最初の「庭」という詩は ー

     

      庭の下に

      不発弾が埋まっているのを

      幼い女の子は知るよしもない

      それが青空から落ちてきたのは遠い昔

      落とした敵はもうこの世にいない

      関東ローム層に埋もれた爆弾は

      木の実にのようには芽吹かない

 

    ...から始まります。

 

  土の匂い、小鳥の鳴く声、草の緑、春の生命の風、読み終えた秋の書籍

  チェンバロの音、ミライを夢見る子ども、いつかの思い出、

  ザッと音をたてる夕立

 

  一番目の詩がつたえたものは、何でしょう

 

 

  谷川俊太郎というひとに、ため息がでるし感動する

  ひとつの詩に、風景や色、匂い、音を織り込んでいて、ハッキリそうだと描いていないのに

  音がして、色が見えて、匂う、風がきて、時間が移ってゆくのですよ

  

  

 

  2013年の詩集ですから、少し前のものですが

  私が知らずにいたのです。

  偶然なにかで知れて、ほんとうに良かった。

 

  良かった


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゜.・*