青いインク壺

 日々写真詩-『妖精・精霊・詩』

テニスンの 『 モード  ⅩⅩⅡ-Ⅰ』

f:id:kemikotta:20150225024917j:plain

 

イギリスの詩人,テニスン(Alfred Tennyson / 1809-92)の

40代半ば完成の『モードおよびその他』の中の詩篇『モード』

があります。

以前にその『モード』の中の(ⅩⅩⅡーⅠ)にまるで魔法のように

魅了されてしまいました。

それは、テニスン詩集の、ではなく、

上の写真の書籍の。

ダイアン・アッカーマン Daian Ackerman(詩人であり、

科学者の目を持つナチュラリスト、自然誌分野のすぐれた著書がある作家)

の「庭仕事の喜び」という書籍に、引用されていた詩に。

翻訳者の訳詩、の話になるわけです。

 

まずは、「庭仕事の喜び」の訳詩

・。*

  庭へおいで、モード

  黒いコウモリも、夜も、飛び立ってしまったから

  庭へおいで、モード

  私は門のところで、ひとり待ちわびている

  スイカズラの木は芳香を漂わせ

  薔薇の麝香は風に運ばれている  ・。*

 

それで私は、岩波文庫テニスン詩集を手にいれ

『モード』の中の(ⅩⅩⅡ-Ⅰ)をさがしめくり見てみると

次のようでした。

 

・。*

 園生(ソノウ)に入っておいで、モード、

  黒い蝙蝠のような夜は過ぎてしまったよ、

 園生に入っておいで、モード、

  この門辺に立つは僕ひとり、

 忍冬の香り、あたりに漂い、

  薔薇の香り馥郁(フクイク)と風にはこばるる。 ・。*

 

ずいぶんと印象がかわります。

訳詩は、おもしろいです。

何度もよみかえしてみたり、また時間をおいてから

読んでみると、男性的だった岩波文庫の西前さんの訳も

とてもロマンティックにも思えます。

最初は、「庭仕事の~」のほうの、古草秀子さんの訳が

女性にしっとりと届くような柔らかい透明感のある感じで

ほんとうに素敵だと思いました。

今も、どちらかというと、そうですけど。

テニスンは男性なので、何度も読んでいると、西前さんの訳が

全体的に感じるに、いいかな、とも思えますね。

「庭仕事の~」の中で登場したときには、ほんとうに素敵でした。

 

あと、気になっているのは

レミ・ドゥ・グルモンの『髪』です。素敵な詩で、大好きです。

くらべてみるのは、上田敏 訳詩と、堀口大學の訳詩です。

それは、またの機会にしますが。

 

 

  f:id:kemikotta:20150225025719j:plain