庭にあるいつもの水溜まりが
空想の異世界の鍵盤楽器
という朝
最初の指先とは別の指先で
またその指先とは別の指先でとんとんと
優しくやさしく触れてゆくと
蒼白い小さな音をたてて
楽器は 一瞬で薄い膜になった
息が白く 空は青白く
空気はオブラートの氷のようだが
思考の隅に微かな異音
とまどいは気のせいだと
白く 青白く 境界なく広がっている
極細粒のつめたい空気を鼻から吸い込み
異音を凍らせ固めて
液体にして うんと呑み込んだ
氷はいつまでも青白く
息はいつまでも白く だれのものも純粋でありますように
『 息 』
°・*.゜