青いインク壺

 日々写真詩-『妖精・精霊・詩』

春 霞


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春が見えてきた
雪と氷から水の音が鳴り出した

高校を卒業した30年前の春に
紀伊半島の田舎から上京した私は
東京の春というのは粒子が荒く
見通しがよくないのだなぁ
と思ったのですけど
どこまでが空で
どこからが此処なのかがわからない東京の空気は
目に見えるのだと
東京の春霞を見つめた記憶

 

もう、東京には暮らせない

 

見える空気を見たあの時から15年が経ち

此処  北東北の海の町に越してから

ようやくそう思うようになった

便利で
にぎやかで華やかで

いいなって思うものを

買う前に実際に手に取って確かめることができる都会ね
車を持っていなくても生きていける
遅くまで明るくて
遅くまで電車もある
なにか、叶うような気がする

だけどもういいかな

 

空気のなかを

あっちに こっちに あらゆる方向へ
あらゆる方向から
色んな矢印が飛びつづけるの
人間を疲弊させるんだなぁ

東京に飛ぶ矢印はあまりに多すぎた

 

 

『春霞』

 

 

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